10月 16 2016

母子生活支援施設の必要性 ~ 寄り添い伴走する「ハンズオン」政策の必要性 ~

皆さんは「母子生活支援施設」という施設をご存じでしょうか?

これは以前「母子寮」と呼ばれていた施設です。
私は、私が通っていた小学校区に母子寮があり、友達もいたので、こどもの頃はよく遊びに行っていました。

この施設は、児童福祉法第38条によれば、
配偶者のいない女子等及びその者の監護すべき児童を入所させて、保護し、自立支援等を行うとともに、
退所後も相談その他の援助を行う施設とされています。

またDV被害者の保護を行う役割も担っています。

また同法第48条の2により、入所者のみならず地域の住民に対する相談、助言等の役割も担っています。

つまり、単なる集合住宅などではなく、指導員等が配置され、相談支援や心理支援、就労支援などを行うとともに、安心安全な生活環境を確保し、家族の生活を支え、子どもの育ちを保障している施設です。
また、退所後も実家のような役割を果たしています。

ところで、このほど宮崎市の小戸母子生活支援施設を廃止されるという報道が宮崎日日新聞に出ていました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160827-00008226-miyazaki-l45

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下記のように、廃止の動きは他県でも見られるようで、全国的に施設数は減少してきています。

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建物が老朽化して耐震基準を満たさず、また共同浴場・共同トイレといった現在の私達のライフスタイル合わない構造になっている中で、今と同じ場所に建て替えて存続するとなると、建設費や運営費がかかる、ライフスタイルの変化に柔軟な対応しづらい、などの理由から廃止という方針が出されたのかも知れません。

さらに言えば、地方自治体がこのような施策を推進するだけの財源措置を国がしっかり行っていないという問題もあるのだと思います。

しかし、これまで果たしてきた機能や役割を廃止してしまって良いのでしょうか?

私は、むしろ、この施設の果たしている役割、機能や必要性はこれまで以上に高まっていると考えます。

先日、この施設にうかがい、管理運営法人で入居家族のサポート役をなさっている方や、実際に入居されているご家族にお会いし、話をお聴きすることで、私はこのことを強く思いました。

精神的に不安定な状態、望まない妊娠、実家の親と絶縁状態、など、さまざまな困難に直面しながら孤立して子育てをしている母親にとって、この施設はいわば実家のような存在です。
利用者の中には、それまでの生活環境の厳しさから、心身に不調をきたしている人や様々な疾患、障害等を抱えている人も増えていると言われており、サポートのニーズは多岐にわたっています。

人は、子供を産んだら自然に親としての能力が身に付くわけではありません。
どの親も、実家の家族や周囲の人の力を借り、相談をし、サポートも受けながら、子育てをする中で、親として成長していくものだと思います。
しかし、現在、核家族化もあって家庭の教育力が弱まり、また地域の共助力なども弱まっている中、親でも学校の先生でもない大人が、同じ一つ屋根の下で一緒に暮らしながら、乳幼児のみならず若い親に対し、相談に応じ、サポートや助言などを行う必要性が高まっていると思います。

ましてや、現在「こどもの貧困」が大きな問題になっているように、我が国はひとり親世帯の貧困率がOECD加盟国の中でも高く、格差が母子世帯等の自立を困難にしている現状が指摘されています。

また、親が「頑張っていればきっと良いことがある」と信じて立ち上がり、前に進んでいくことができるためには、その人の心の中に希望の灯が灯るような「寄り添い、伴走する」政策、周囲との人間関係・信頼関係を育む政策などが必要だと思います。

アパートに住んで、相談担当職員や指導員等がときどき訪問する形でサポートする、というだけでは、効果が上がらないケースも多くあると思います。

この問題は、一般的なサポートでは問題が解決しない現状を踏まえた上で考える必要があると思います。

例えが適当ではないかも知れませんが、例えば起業支援の分野でも、「ハンズオン」支援、つまり、資金を提供するだけでは十分ではなく、経営に直接参画するなど、「一緒に悩み、一緒に苦しみ、一緒に笑う。」支援が必要だとされています。
ビジネスの世界でも、既に今日「ハンズオン」の必要性に対する認識は定着しています。

老朽化した施設をそのままにしておくわけにはいきませんが、この際、今まで果たしてきた役割、機能をむしろ強化する形で、全国のお手本となるような、そして多くの方々が「頑張っていればきっと良いことがある」と信じて前進できるふるさとづくりにつながるような政策を是非考えていただきたいと思います。

宮崎市は支援態勢を維持していく方針とのことですが、是非施設の「今日的な」役割、意義を踏まえて、実質的な意味での自立につながり退所後もサポートするという「伴走型」の支援を行っていくことを前提として、更なる検討を行ってほしいと思います。

そして、その実現のために私も是非お役に立たせていただきたいと思います。

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